この週はAdobeがモバイルブラウザ向けFlashの開発終了を発表するなど、いくつか重要な業界ニュースが流れた。NVIDIAは高速・省電力性能に優れるプロセッサ「Tegra 3」を、ARMは新型GPU「Mali-T658」を発表した。また、ソニーはFeliCa含めて3規格に対応するNFCチップを開発した。新製品についてもエプソンから変わり種のヘッドマウントディスプレイが登場するなど、注目の話題に溢れる一週間だった。
【新製品】
(1) エプソン製ヘッドマウンドディスプレイ「MOVERIO BT-100」
エプソンはシールスルー型のヘッドマウントディスプレイ「MOVERIO BT-100」を発表した。この製品の最大の特徴は2つ。1つはシースルー型のため、画面と同時に周囲を見ることもできる点だ。また、もう1つはAndroidプラットフォームを採用している点。操作用のコントローラーにAndroidを搭載し、スマートフォンなどと同様にウェブ上の動画やサイトなどのウェブコンテンツを楽しむことができる。microSD/microSDHCカードスロットも備えているので、動画コンテンツをメモリカードに入れてBT-100で楽しむことも可能だ。
画面の大きさは、5メートル先なら80インチ相当、10メートルなら160インチ相当、20メートル先なら320インチ相当など、遠くを見るほど大きく見える。発売日は11月25日で、想定実売価格は6万円前後の見込み。
(2) ASUS製タブレット「Eee Pad Transformer Prime」
ASUSはNVIDIA Tegra 3を搭載したタブレット「Eee Pad Transformer Prime」を12月に発売する。価格はストレージ容量別で、32GBモデルが499ドル、64GBモデルが599ドル。「Eee Pad Transformer TF101」の後継機種にあたり、コンセプトには変更なし。最大のグレードアップ・ポイントはNVIDIA Tegra 3を採用する点だ。キーボードドックに接続すれば、ノートPCのような使い方もできる。
OSはAndroid 3.2で、将来的には4.0へのアップデートが提供される予定。ディスプレイは10.1インチのSuper IPS液晶で、解像度は1280×800。タブレット本体のサイズは約263×180×8.3mmで、重さは約586g。Eee Pad Transformerシリーズはキーボードドックとの接続が魅力の端末であり、Primeも同様。しかも、キーボードドックにもバッテリーが搭載されているので、接続した状態では最大で18時間の連続駆動ができる。タブレット単体では最大12時間。
(3) Androidのマスコットフィギュア「Android mini collectibles」が国内正式発売へ
米Dead Zebra, Incが制作・販売するAndroidの公認マスコットフィギュア「Android mini collectibles」が国内でも発売になる。ラナがDead Zebraと日本における独占販売契約を締結した。Android mini collectiblesは高い人気と生産数の少なさから長い間入手困難なアイテムとなっていた。国内では一部のショップで海賊版が販売されている状況にあり、正規版の正式販売が待たれていたところだ。
ラナはStandard EditionとDIY Editionを12月より家電量販店や雑貨店などで販売する。価格は840円。
【業界ニュース】
(1) Adobe、モバイルブラウザ向けFlashの開発を終了へ
Adobe Systemsは9日、Android端末やRIM製PlayBookのブラウザ向けFlash Playerの開発を終了すると発表した。モバイルブラウザ向けのFlash Playerの開発が終了することで、モバイル向けウェブの世界は大きな節目の時を迎えることになる。ただし、デスクトップ向けFlash Playerの開発は継続される。加えて、モバイル向けに関してもバグフィックスとセキュリティ・アップデートは提供される。
同社は今後のモバイル市場向けにはAdobe AIRとHTML5に注力する方針を示している。
(2) NVIDIA Tegra 3発表
NVIDIAは4つのCPUコアと省電力用の「コンパニオンコア」を搭載したモバイル向けプロセッサ「Tegra 3」を発表した。初搭載品はASUSから12月に登場する「Eee Pad Transformer Prime」。Tegra 3の前モデルにあたるTegra 2ではデュアルコアだったが、Tegra 3はクアッドコア+1という構成。その時々の負荷状態によって駆動するコアの数を調整できる機能を持つ。しかも、非常に小さな負荷の場合はコンパニオンコアだけの駆動で済ませられる。優れた省電力性能を誇る。
(3) ARM、新型GPU「Mali-T658」を発表
英ARMはモバイル向けの新型GPU「Mali-T658」を発表した。2013年後半から2014年を目途に搭載製品が登場する見込み。Mali-T658は、前ハイスペックモデル「Mali-T604」と比べて4倍程度のGPU演算能力、最大2倍程度のグラフィックス性能を持つ。また、サムスン電子製スマートフォン「GALAXY SⅡ」に搭載されている「Mali-400MP」との比較では最大10倍程度のグラフィックス性能になる。
(4) ソニー、モバイルFeliCa対応NFCチップを商品化
ソニーは複数の非接触IC規格に対応したモバイル向け無線通信チップを開発した。日本やアジアで普及するFeliCa、欧米を中心に利用されているNFC TypeA/Type Bの3つの規格をサポートする。このチップを使うことで、国内外の様々な近距離無線通信サービスにまとめて対応することができる。
【ソフトウェア更新】
(1) au向けXperia acro IS11S
ソニー・エリクソンはXperia acro IS11Sに対する機能バージョンアップを10日より順次開始した。複数の新機能・機能改善があるので、ユーザーの方はぜひ導入しておきたい。文字入力アシスト機能「POBox Touch」がバージョン4.3に進化し、入力周りが改善される。また、画面のスクリーンショットを撮影する機能、BluetoothやGPS、Wi-Fiなどをホーム画面からワンタッチでON/OFFできるウィジェット、アプリトレイからダイレクトにアプリのアンインストールができる機能などが追加される。
ソニー・コンピュータエンタテインメントが展開するライセンスプログラム「PlayStation Certified」への対応も魅力だ。PlayStation Storeからゲームアプリを入手し、遊ぶことができるようになる。さらに、ソニーの動画配信サービス「Video Unlimited」にも対応する。
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(2) ソフトバンク向け008Z
ZTE製スマートフォン「008Z」に対するソフトウェア更新が11日より提供開始となっている。緊急地震速報への対応のほか、電話帳のふりがな自動入力機能、電話帳のGoogleアカウント同期機能、ホーム画面でのフォルダ機能の追加がある。また、省電力状態においてメールの自動受信に失敗する場合がある問題も改善される。
ソフトウェア更新は3G回線もしくはWi-Fiで実施できる。3G回線を利用した場合でもパケット通信代はかからない。
(3) ソフトバンク向け007SH/007SH J/007SH KT
シャープ製スマートフォン「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH/007SH J」、「007SH KT」に対するソフトウェア更新が9日より提供開始となっている。今回の内容は、特定のアプリを起動後に電池の消耗が早くなる場合がある、という事象の改善になる。3機種とも自動更新に対応しているので、お知らせメールに記載された日時になれば自動的にファイルのダウンロードが行われる。ダウンロード完了後に通知が行われるので、メッセージに従って操作を進めればいい。
(4) ソニー製タブレット「Sony Tablet」シリーズ
ソニー製タブレット「Sony Tablet」シリーズの各モデルへ対するソフトウェア更新が10日より提供開始となった。対象モデルは「SGPT111JP/S・SGPT112JP/S・SGPT113JP/S・SGPT211JP/S」で、OSバージョンがAndroid 3.2.1に上がることに加え、「Video Unlimited」アプリの追加や、「PlayStation Store」アプリの追加などの内容が盛り込まれている。
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【あとがき】
端末の心臓部を担うメーカー2社から新製品の発表がありましたね。NVIDIA Tegra 3とARM Mali-T658です。前者は12月に搭載製品が登場します。後者はまだ先ですがその性能の高さは魅力的です。待ち遠しいですね。また、Adobeがモバイルブラウザ向けFlash Playerの開発を止めることを明らかにしました。この判断が下される時はいずれ来ると予想できましたが、意外と早かったように思います。やや残念でもあります。
今週もGAPSISがお伝えしました! 来週もお楽しみに!