ご無沙汰しております。gamellaです。
久しぶりのアンドロイドの論点では、「Androidで誰がもうかるのか?」というテーマについて考えてみたいと思います。
このテーマの発端は以下の記事でした。
- 「Androidで誰がもうかるのか?」――誰かがもうかるルールの下でゲームをしよう!
Android端末で大もうけをする企業が生まれない理由は、「ハードウェアで大きく利益を上げられる企業が“存在できない”」からだ。
これが私が出した現時点での結論だ。サムスンやHTCが伸びているといったところで、アップルには全くかなわない。
そればかりか、勝ち組と目されている端末メーカーですら、今後の先行きは不透明だ。
「Androidで誰がもうかるのか?」というのは非常に難しい問題で、上の記事のようにAndroidで利益を上げるというのは企業にとってとても難しい状況です。
ただ、それでもなお企業がAndroidに投資する理由があるわけで、そこについて考察してみたいと思います。
まず、Androidが誕生したころのことを考えてみます。GoogleはiPhoneとほぼ同時期にAndroidの最初のSDKのベータ版をリリースしており、それが2007年11月です。
こちらは2007年11月に公表されたAndroidのSDKベータ版に搭載されたエミュレータ画像であり、当時のAndroidの完成度を最も端的に表す画像だと思います。
一方、iPhoneは2007年1月に発表された時点ですでに現在の設計思想を完全に保持した完成度が高いものでした。
それは以下のジョブズの発表の画像を見て頂ければ一目瞭然だと思います。
こちらの画像を見比べても分かる通り、そのスタート地点においてAndroidは到底iPhoneの完成度に太刀打ちできるものではありませんでした。
こうやって、過去を振り返ってみてもAndroid/Googleは以下の点を克服しないとiPhoneには勝つことはおろか、対抗することさえ難しい状況だったと思います。
- 現在から振り返ってもまったく古くないiPhoneの設計思想に対抗できるものをAndroidが保持していない点
- AppleがiPodで成長させた豊富なコンテンツやストアのシステムをGoogleは保持していない点
- Appleが保持する世界最高のデザイン力をGoogleは保持していない点
- AppleがiPodの時に完成させつつあった垂直統合のビジネスモデルをGoogleは保持していない点
- Appleが保持するMacOSXで築き上げた最高クラスのクライアント向けソフトウェアスタックをGoogleは保持していない点
この差は、どんなに潤沢な資金を保持していても、なかなか挽回できるものではありません。
また、下手に儲かっているビジネスモデルを持っているとそれを壊すことが出来ずにイノベーションを起こすことができなかった例も過去に多く、Googleにとっては、iPhoneに対抗するスマートフォンOSを創り上げることはとても困難な作業になることは目に見えていました。
この時、Googleが採用した戦略は以下のようなものです。
- アプリケーションに関してはどの事業者でもストアを開設できるようにAndroid自体にアプリをインストールする認証をAndroid Marketにしばらない。こうすることで、アプリケーションストアを持てる旨みを通信事業者、プラットフォームホルダーに残した。
- Androidを搭載するデバイスを作成するときに、デバイスのスペックに関する制約を初期はあえて設けず、むしろ積極的にいろいろなデバイスで利用できるようなゆるいライセンス形態にした。
- Androidを他のデバイスに簡単に移植できるようにCPUに依存しないJavaをアプリケーションレイヤーにおいた。
- Linuxなどのすでに存在するソフトウェアスタックを積極的に活用した。
この結果、いわばiPhoneとは真逆の戦略で、今のように多数の企業にAndroidが採用される状況ができ、多種多様なデバイスが生まれることで、少なくともシェアの上ではiPhoneを抜くこともできました。
このように、スタートの状態から見たら、たとえ大きく儲かっている企業がなくても、初期のころ想定された「iPhoneにスマートフォン市場が全て抑えられる」という最悪のシナリオは回避できたわけです。
この結果は少なくともGoogleにとってほぼ成功といっていい状況だと思います。
さて、問題はここからです。シェアの上ではiPhoneを抜いたAndroidですが、上の記事のように儲かっているか?という観点で見た場合、もっとも儲かると思われるライセンス部分を放棄したので、ここからどのように儲けることができるか?という点では上の記事の通り難しい状況です。
ただ、Googleにとっては、インターネットのサイズ自体が検索の件数、いわば儲けに直結するのですから、デバイス自体で儲けようというスタンスは今後もないのではないかな、と思います。
モトローラモバイルの買収後も、特に積極的にオフィシャルデバイスを展開しようというスタンスを見せてないですし、下手にAndroidを儲かるライセンスに切り替えて、Androidの現在の勢いが失われる方がずっと怖いはずです。
Googleにとってはどこか最も勢いのあるメーカーと協力して、iPhone 4Sの時に発売したGALAXY NEXUSのようなフラグシップ機を発売し、少なくともAndroidがOSとしてiOSに遅れをとっていないという印象を出すことができればそれでいいと考えているようにも見えます。
他のAndroidデバイスを作成する企業にとっても厳しい状態で、今の状況というのは、独自の機能をAndroidデバイスに実装する時間よりも、Android自体の進化が早いため、何か差別化要因を実装している間にデバイス自体が陳腐化していくという状態となっています。
ただ、他の企業からしてみれば、iPhoneに対抗できるプラットフォームがこのようなゆるいライセンスで利用できる状態をむしろ喜ぶべきで、これを儲からないと文句をいうのはお門違いという気もします。
では、Android以外の方法を採用できるか?というと、独自OSで今のiPhoneに挑むのはより困難な道なのですから。
以下の2011年にヒットしたスマートフォンランキングを見ると、GALAXYシリーズのようにスペックやディスプレイの点で圧倒的な差別化要因を持つ以外のヒットの傾向は見ることができると思います。
上のランキングではXperia acroがiPhone 4Sを抑え1位となっていますが、Xperia acroがヒットした要因はお財布携帯という日本独自のローカライズをいち早く行い、かつ世界標準のスペックのデバイスをリリースしたことにあります。
この世界標準のデバイスでありながら、素早く各市場に特化したローカライズモデルをリリースできることが、他の先進国、新興国でも重要なポイントになってきており、中国では漢字の入力が行い易い手書き文字入力に特化したスマートフォン、また中東では防塵仕様のスマートフォンが人気があるそうです。
今後、成長が見込めるインドやアフリカでは8000円を切るAndroidデバイスに人気が集中しているそうですが、この低価格モデルでもどのような差異化ができるのか、などが今後のポイントになってきそうです。