先日、スマートフォンゲームに全く新しい特徴を持つゲームが生まれました。シグナルトークと月島ファクトリーが開発・提供する『テリトリーモンスターズ』(略称「テリモン」)です。テリトリーモンスターズは現実世界のマップを舞台とした陣取りゲームでありつつ、バトルステージでは戦略的シミュレーションとパズルゲームの要素を持ち、さらにはモンスター育成といった要素も併せ持つ作品です。
様々な要素が複合的に絡んでいるため、一見複雑に感じるかもしれませんが、驚くほどシンプルにまとめられ、取っ付きやすいゲームに仕上がっています。実際に足を運ぶ位置情報ゲームを好きな方はもちろん、戦略的シミュレーションやパズルゲーム、モンスター育成ゲームを好きな方にもオススメできる作品です。
本記事では、そのテリトリーモンスターズの企画・開発に携わるシグナルトークの代表取締役 栢孝文(かや たかふみ)氏へのインタビューをお届けします!
『テリトリーモンスターズ』とは?
――まずはテリトリーモンスターズの概要を教えて頂けますか?
栢:位置情報と現実世界の地図を使った陣取りゲームです。例えば、今この場所で『キャプチャー』と呼ばれる操作をすることで現在地周辺のマップを取得することができます。取得したマップは全部で25ブロックに分かれていて、それぞれがバトルのステージになっています。自分のモンスターを出撃させて敵を倒せばそのブロックを占領できます。各ブロックを次々と占領して、自分、そして自分が所属する勢力の陣地を増やしていくことが基本的な流れとなります。
(図:キャプチャーしたマップ例。25マスのブロックで1つのマップが構成されます)
――勢力争いというのは?
栢:現実世界の地図を舞台として、その世界を4つの勢力で奪い合います。プレイヤーが選べる勢力は『青の国』『赤の国』『緑の国』の3つで、残る『黒の国』はコンピューター、いわゆるNPCの勢力となりますので選べません。
――私もプレイしていますが、青を選びました!
栢:私は赤です!
――ちょうど敵対勢力同士ですね! 私はまだNPCとしか戦ったことがないのですが、今ここで栢さんと戦うことはできますか? その中で戦闘システムや本作の特徴もご紹介頂けると助かります。
栢:それでは、まずは今ここでお互いに現在地周辺のマップをキャプチャーしましょう。同じマップをキャプチャーすれば、一緒にプレイできます。
(図:実際にキャプチャーしたマップ)
――同じブロックを選んで出撃すればいいんですよね?
栢:はい。出撃して頂くと、私のモンスターも表示されると思います。
――表示されました! 同じマップでリアルタイムで戦えるんですね!
(図:左が栢さんのスマホで右が筆者のスマホ。同じブロックで同じモンスターが登場し、リアルタイム対戦になっていることがわかると思います)
栢:はい。本作のバトルはサーバーを介して常に通信しながら行われるオンラインバトルなので、同時に同じブロックに入れば自動的にマルチプレイバトルとなります。
――一つのブロックでは最大何人まで同時に戦えるのでしょうか?
栢:一つのブロックに同時に入ることができるプレイヤー数は一つの勢力あたり10人までです。三つの勢力を合わせると合計で30人までの同時プレイが可能となります。
――それなら同じ勢力の仲間数人で集まって敵をフルボッコにするようなこともできるんですね!
栢:はい。逆にフルボッコにされるかもしれませんけど(笑)
――確かに(笑)
栢:それでは実際に戦ってみましょう! キャプチャーしたマップだけでなく、バトルステージもマス目で区切られていて、プレイヤーは各マスに最大で10体までモンスターを配置できるようになっています。
――10体も出せるんですね! 私はいつも4体しか出撃させていませんでした。
栢:ちょっと分かり難かったかもしれませんね。最大で10体まで出せますし、多い方が当然有利です。とはいえ、モンスターを10体集めるのが最初のハードルになると思います。
――モンスターを配置したら、次は動かして敵を攻撃していくわけですね?
栢:はい。モンスターにはそれぞれ『移動力』という能力があり、その数だけマス目を移動できます。移動させて囲ったマスは自分の陣地になります。また、敵にぶつけると直接攻撃となりますが、本作では敵の周囲を囲む『テリトリーブレイク』と呼ばれる攻撃方法もあります。このテリトリーブレイクが本作の戦闘における特徴となっています。
(図:モンスターはマス上を動かせて、囲ったエリアを占領でき、敵にぶつけると直接攻撃。囲ったエリア内に敵がいたらテリトリーブレイクによる攻撃)
――私も最初は直接攻撃していましたが今ではテリトリーブレイクが中心です。
栢:結構プレイして下さっているようで嬉しいです。テリトリーブレイクにはパズル的な要素もあって、様々な囲み方ができます。出撃時のモンスター配置も絡んできます。また、本作の戦闘では『CHAIN(チェイン)』をどれだけできるか、ということもポイントです。チェインとは、モンスターを移動させる際に味方モンスターの上を通らせることで攻撃力が増す効果です。チェインを重ねれば重ねるほど大ダメージを与えることができるんです。
――チェインを使うとバトルが楽になりますね。
栢:はい。ちなみにチェインは移動中(走っている最中)のモンスターのルートに味方モンスターを移動させることでも重ねられますし、テリトリーブレイクも連続してできますので、慣れてくるとスピーディーな操作で波状攻撃を仕掛けられるようになってくると思います。それができれば強敵だろうと一気に倒せるようになってきます。本作では戦い方を工夫すれば、課金をしなくても結構ザクザクと敵を倒していけるようになっています。
――チェインで攻撃力を高めて、テリトリーブレイクで複数の敵を一気に叩けると爽快ですね! ところで今私たちが戦っているブロックに他の誰かが乱入することもできるんでしょうか?
栢:できます。本作のバトルはサーバーと通信をしながら行うオンラインバトルなので、バトル中に他のプレイヤーが同じブロックに出撃すれば乱入できます。
――通信はNPCとだけ戦う時も行われるのですか?
栢:はい。プレイヤーとの対戦だけでなく、全てのバトルがサーバーを介していますので、NPCとの戦いでも同じです。例えばNPCと戦っている最中に他のプレイヤーが乱入してくることもありえます。
――なるほど。戦闘が終われば、そのブロックは勝ったプレイヤーの勢力下に置かれて、あとは次のブロック、次のエリアと戦い続けて陣地を広げていくわけですね?
栢:それが基本的な流れですね。ただし、モンスターを帰還させずに派遣したままにすることもできます。実は現在のバージョンでは不具合から正常に機能していない部分ですが、戦ったブロックに置いてきたモンスターは防衛戦を自動的に行い、それに勝利できれば『宝箱』や『卵』といったアイテムをゲットできるようになります。そのため、本来の設計では、モンスターはある程度置いてくることが基本となります。
――そうなんですね。私は毎回全てのモンスターを帰還させてしまっていました。
栢:すみません。今の仕様だとそれでいいんです。防衛して勝利すればアイテムをゲットできる、というシステムに不具合があって正しく機能していませんので、現時点では出撃させたモンスターは戻して構いません。アップデートでこの不具合が解消されましたら、置いてくる方がメリットがありますので、モンスターが余っている場合は置いてきてみてください。
――なるほど。ところで今キャプチャーしたエリアのような都会だと参加プレイヤーも多いと思いますが、そうした激戦区と、私が住んでいる地方のような場所による有利・不利はありますか?
栢:その点は気を配った部分の一つです。違いはあります。激戦区ではモンスターのレベルを上げやすいです。一方でブロックの占領や防衛は難しくなるので、陣地を広げたりキープする難度は高くなります。地方などプレイヤーの少ないエリアは逆です。敵の中心はNPCなので陣地を広げやすく防衛もしやすい。不具合が解消されれば防衛に成功すれば様々なアイテムが自動的に入ってきます。そのため、それぞれにメリット・デメリットの違いはあるにせよ、地方だから不利だといったことはないと思います。
――私は過去に『Ingress』をプレイしていた時、近所に『ポータル』がほとんどなくて短期間で飽きてしまったのですが、本作では地方ならではの魅力もあるんですね。
栢:そのためのNPC、黒の勢力なんです。
攻略アドバイス
――攻略アドバイスやコツなどがあれば教えて頂けますか?
栢:やはりポイントはチェインとテリトリーブレイクです。例えばモンスターを一列に沢山並べればチェインを多く重ねたテリトリーブレイクができますので、一気に敵を倒せます。初期配置の陣形も色々と試してみて下さい。
――なるほど。ところでマップでの技についてお聞きします。キャプチャーした場所から離れてもそのマップでプレイできますが、これは仕様なのでしょうか? それとも裏技なのでしょうか?
栢:いえ、コンセプトで元々そういうものです。外出先でキャプチャーしたマップを帰宅後にプレイすることもできるわけです。皆さん日中はゲームを自由にプレイすることが難しいと思いますが、キャプチャーさえしておけば、好きな時間に好きな場所でそのマップをプレイできるので、時間と場所に縛られず、どなたでも遊びやすいと思います。
――決して裏技ではなかったんですね(笑)
栢:(笑)
――私は最初はキャプチャーした場所に止まってプレイしていて、途中から移動してもプレイできることに気付いたんです。そのため、裏技かと勘違いしていました。
栢:本作でGPSを使うのはキャプチャーを実行する時だけで、入手したマップのプレイはいつでもどこでも可能なんです。
――繰り返しの質問にもなりますが、例えば今私が新宿駅に行ってキャプチャーしたとします。そして帰宅後、20時としましょうか。その時間にプレイしたとします。その瞬間に新宿駅にいてプレイしている方、もしくは私のようにキャプチャーだけして帰宅後にプレイしている方が同じブロックに入った場合、リアルタイムでのマルチプレイになるんですよね?
栢:はい。同じブロックに同じ時間に入ればリアルタイムバトルになります。
――なるほど。次にアイテムについてお聞きします。私がプレイしてきた限りでは、モンスターを進化させるためのアイテムがなかなか手に入りません。入手アドバイスがあれば教えて頂けると助かります!
栢:出ませんよね〜(笑) 私も同じです。アドバイスというわけではありませんが、今後のアップデートの際に、プレイヤーの多い激戦区では出やすくしようと考えています。出てくるアイテムは進化アイテム素材に限りませんが、それもあって激戦区のブロックは占領する価値、守る価値が相対的に高くなってくると思います。また、防衛戦の報酬として基本的にアイテムをゲットできますので、不具合が直ったらモンスターを置いたままにしてもらえば、それなりにアイテムが入ってくると思います。
――結局、基本的にはモンスターは置いてきた方がいいんですね。
栢:そうです。モンスターは置いたままにしておく方が良いです。沢山のブロックにモンスターを派遣しておけば、それだけ多くのアイテムが自動的に入ってくるようになります。
――なるほど。不具合改善のアップデートを楽しみにしています!
栢:実は現在のバージョンでは、モンスターの派遣状況も分かりにくいので、今後のアップデートでマップ画面を改善して、どこにモンスターを配置しているのか、といったことも分かりやすくするつもりです。そうすると、どんどん置きたくなってくると思います。
――モンスターといえば、何かオススメのモンスターはいますか?
栢:モンスターのステータスをご覧頂けば分かると思いますが、モンスターによってはサポート能力を持っています。隣のマスにいるモンスターにダメージ軽減の効果を与えるとか攻撃の補助をする、またはカウンター攻撃をするといったように能力は様々ですが、それらの能力を意識しながら戦うことをオススメします。とはいっても、今のところ収録モンスターも少ないですし、移動力以外はあまり差がない状態です。そのため、現時点でのオススメのモンスターとなると『エレミー』が使いやすいと思います。エレミーは攻撃力こそ低いですが移動力が高く、広いエリアを一気に囲めるので、攻撃力の高いモンスターを並べてチェインを重ねつつテリトリーブレイクをすれば、複数の敵を一網打尽にできます。
――サポート能力なども考慮しつつ出撃モンスターを選べば、より効率よく戦えそうですね。
栢:サポート能力を持つモンスターは今後色々と出てきますので楽しみにしていて下さい。『ファークル』というモンスターは周囲2マスまで味方を守る能力を持っていますので、将来導入予定の『レイドバトル』のように強敵と戦う際には必須能力になってくるかもしれません。
――レイドバトルも計画されているんですね!
栢:駅などランドマーク的な場所でイベントとしてレイドバトルを実施しようと考えています。強敵を複数のプレイヤーで協力して倒す、というイベントです。単独で戦ってダメージを与えられないような強敵でも、攻撃力を増強するサポート能力を持つモンスターを隣接して配置したり、攻撃力の高いモンスターをチェインしたりすれば戦えます。防御系の能力を持つモンスターも役立つと思います。
――そうなってくるとモンスターの個性が本当に重要になってきますね。
今後のアップデート予定
――レイドバトルの導入予定があるとのお話ですが、今後のアップデート予定を教えて頂けますか?
栢:まずは先ほどのレイドバトルですが、ゆくゆくは導入しようと考えていますが、まだ時期など詳しいことを言える段階ではありません。
――キャプチャー機能のおかげでレイドバトルだろうと帰宅後に参加することも可能ですよね?
栢:はい。イベント前の都合の良い時にキャプチャーしておけば大丈夫です。山手線の駅など、何らかの場所に4マスや9マス占領するような巨大モンスターが出るといったことも考えています。また、バトルの報酬としてトドメを刺したプレイヤーにはそのモンスターの卵をプレゼントするといったことも考えています。それに、1日かけて戦っていくバトルなども面白いかもしれません。その場にリアルタイムでいないと戦えない敵とかも面白いかもしれません。
――全く新しい遊び方になりそうで実装が楽しみです!
栢:新しい遊びという面では、複数のプレイヤーで対戦して時間制限で勢力を競う、といったものも面白いかと考えています。バトル画面の上部に各勢力のパーセンテージが表示されていますが、この情報も活かせますし。
――なるほど。友人同士で一緒に対戦するのも楽しそうですね!
栢:はい。結局現在のところ、本作は途中までは面白いと感じてもらえるかなと思っていますが、モンスターが20体ほど揃ってきたあたりから、何を目指して続ければいいのか分からなくなってくる部分もあると思います。もちろん陣地拡大や防衛戦などに加えてモンスターの育成を進めるといったものもありますが、我々開発チームでは、その先の部分にも取り組んでいます。それがレイドバトルなど、といったことになります。
――他にはいかがでしょうか?
栢:チュートリアルやヘルプなどでの情報提供、いわゆるゲームプレイを学んでいくシーケンスの改善も急務だと思っています。
――本作くらいのチュートリアルは短くて楽だと感じましたが、確かに少し情報が不足しているとも思いました。
栢:また、派遣したモンスターによる防衛戦に関してもレポート機能のようなものを導入することを検討しています。アプリを起動した時にレポートが表示されて、どこを防衛しましたとか、誰々に敗北しましたとか、宝箱を何個ゲットしましたといったことが分かるように。アプリを使っていない時に起こったことを手軽に分かる仕組みを実装しようと考えています。それらの情報があれば、プレイの参考にもなると思います。例えば、自宅を守りきることで宝箱を大体4つゲットできるな、ということが掴めれば、そこを防衛する価値も判断できますし、必要なアイテム入手にどれくらいのブロックにモンスターを派遣すればいいのか、なども分かってくると思います。
――ちなみに今のバージョンでは防衛戦の勝ち負けはどのように見分ければいいんでしょうか?
栢:メニューの『モンスターボックス』を開いて頂いて、『出撃中』と表示されていれば、まだ生き残っている、ということになります。一方、出撃中だったはずのモンスターが『回復中』の表示に変わっていれば、負けて戻ってきたことになります。
――ところで、本作では『★3』や『★5』など、モンスターのレアリティ表示はないのでしょうか? どのモンスターがレアなのかどうかを判断する際、私は進化に必要な素材の数などで見ているのですが、レア表示があれば便利かな、と思いました。
栢:今のところはありませんが、確かにそういう表記はあった方がいいかもしれませんね。
――モンスターは今後続々と新しいものが登場するのでしょうか?
栢:はい。色々なモンスターが控えています!
――これは個人的な要望なのですが、キャプチャーをしたマップを複数枚保存できるようにできないでしょうか? 出掛けた時に5箇所くらいキャプチャーをして、その5マップを帰宅後に切り替えながらプレイできたりするといいなぁ、と。有料の拡張機能としてでも構わないのですが。
栢:そういう拡張機能もアリかもしれませんね。レイドバトルのようなイベント企画においてもキャプチャーしたマップを何枚か所持しておけるのなら参加者が増えて、より盛り上がりそうですし。
――一プレイヤーとしても今後のアップデートを楽しみにしています!
テリトリーモンスターズの誕生秘話
(写真:テリトリーモンスターズの企画・原案を手掛け、全体的な監修も担う栢氏)
――本作誕生の経緯を教えて頂けないでしょうか? キッカケはどのようなものなのでしょうか?
栢:本作を作ろうと思ったキッカケは『Pokémon GO』(以下、『ポケモンGO』)にハマったことです。廃人のようにプレイしました。ピーク時は1日15時間くらいプレイした日が3週間ほど続いたと思います。
――それは相当ですね(笑)
栢:はい(笑) 全く仕事もしないし、嫁さんにも呆れられるし、と。体重も何kgか落ちました。それだけプレイして、ある日ふと思ったんです。『日本製じゃないのが悔しいなぁ』って。『ポケモン』は日本のIPなのにそれを使ったゲームを海外メーカーが作ってヒットさせている。しかも、日本的なゲーム性を持つ作品でもなくて、言ってしまえばただボールを投げるだけですよね。もちろんそれでも面白いからハマったわけですが、悔しい思いも感じたんです。『PlayStation 4』などの据え置き機における豪華なグラフィックのハリウッド的な作りの作品については仕方ないと思う部分もありますが、アイデア勝負の作品は日本からヒットを出したい! そう思って実際にアイデアを考え始めました。
――それはとても共感できます。
栢:ポケモンGOで何が面白かったかというと、地元では俺が一番だぞ! みたいな『おらが村で一番』という感覚かなと思いました。そのような感覚は例えばオンラインゲームでは得られませんよね? オンラインゲームでもギルドなどグループ内での優越感は得られますが、それは土地に基づいたものではありません。
――Ingressでも同じように『このポータルは俺のもの!』『このエリアは俺の支配下だ!』といった感覚がありましたね。
栢:そうですよね! そのような感覚は人間が元々狩猟民族だったから感じる満足感なのかと思います。そして、その感覚をゲームにできないかなと考え、最初はマップ上で兵器を自宅の周りに配置したら面白いんじゃないかな、というアイデアが出ました。とはいっても、それほどピンと来なくて、兵器ではなくモンスターを配置したら! と考え直しました。まあ、とにかく何かを配置したかったんですね。
――それがスタートだったんですね。マップ上にモンスターを配置すると聞くだけで戦略的ゲームになる印象を受けます。配置するモンスターの構成も考えて。
栢:そうですよね。自宅はどうしてもやられたくないから、こいつを置いておこうとか。
――遠征先にはこいつを配置しよう! とか。
栢:昔の『大戦略』のようなイメージもありました。この兵器(モンスター)はまだ弱いからこの辺で鍛えて、一番強い奴を激戦区に送り込もうとか。ここは負けちゃいけない場所だから一番強い奴に任せようとか。そういった戦略的に考える要素を入れられればと思いました。自宅に置いてきたモンスターがしっかり防衛できるか心配になるような感覚やモンスターへの愛着なども出るようにしたいな、と。
――なるほど。
栢:また、モンスターは弱い奴でも強化・進化素材にするだけでなく、ちゃんと役立つようにしたかったんです。本作でも素材としても使えますが、レベル1のモンスターでも10体配置すればそれなりに守れるかもしれない。また、30分間しか持たなかったとしても、それはそれで役立ってくれた感覚を持てるかもしれません。また、強いモンスターやカッコいいモンスターを入手したら、自宅の周りに配置して「俺はこんなモンスターを持っているんだぞ!」という自慢もしたくなるかもしれません。
――私はゲームを始めてしばらくの間、ダブったモンスターを強化素材にバンバン使ってしまいましたが、後から勿体無いことをしたと後悔しました。というのも、本作ではバトルで普通にレベルが上がるので、強化素材に使うのはあまり割に合わないと気付いたからです。
栢:そうですね。その辺りのバランスは他の多くのスマホゲームとは異なるかもしれません。弱いモンスターでも役に立ちますし、モンスターの構成や配置の楽しみも感じて頂けると思います。
――考えてみれば、モンスターボックスに入るモンスターの上限数が最初から1,000体というのも防衛戦を見越した数字なんですね。やけに大きいな、と不思議に思っていました。
栢:はい。開発を手掛けた月島ファクトリーが1,000体でもしっかりと動くように作ってくれましたが、開発を監督している日野さんも『軍団を指揮できるようにしたい』と言っています。
――実際のところ、今のバージョンでは最大数派遣したとしてどれくらいのモンスター数が必要になるのでしょうか?
栢:キャプチャーしたマップは25のブロックに分かれています。ですから、25掛ける10体で、1マップに最大で250体まで配置できることになります。そう考えると、1,000という数字も決して大きすぎるものではないと思います。実際には1,000という数字は最低数で、2,000や3,000に増えてもいいようなゲームとして考えています。
――2,000や3,000といった数字になると確かに軍団指揮というかスケールも大きくなってきますね。
栢:本作は私としては初のスマートフォン向けソーシャルゲームとなりますが、新しい感覚を味わえるものを作りたいと思って開発しています。
――確かに今のところ、本作のような位置情報ゲームはありませんね。
栢:極端に言えば真似されるくらいのものを作りたいんです。まずは本作がヒットしないことには真似もされないでしょうけど。
――個人的にもハマってきていますし、今後のアップデートも楽しみなのでヒットを期待しています! ところで、開発期間はどれくらい掛かっているのでしょうか?
栢:一年半くらいです。ただ、全く新しいゲームと思っていますので、作るのも凄く大変で、やっとできたとはいってもまだ完成系でもありません。モンスターを配置して防衛してアイテム等の報酬を得られる、という部分は現時点では不具合によって未完ですし。現在、その不具合の解消に向けて頑張っているところです。
――本作のターゲットはどのような層でしょうか?
栢:夢は国民的ゲームを目指そう! と思っていますから、性別や年齢を問わず万人をターゲットと考えています。
――万人向けというのはモンスターのデザインからも感じます。露出度の高い人間の女性型のモンスターなどがいないので、ターゲット層を絞っている感じを受けませんでした。とはいえ、人型のモンスターはいるんでしょうか?
栢:まだいませんが、今後登場予定のモンスターリストには入っています。ですが、『ドラゴンクエスト』の『魔導師』とかのレベルです。美少女モンスターなど『萌え』の要素はないです。
――ですが、今の多くのゲームにおいて人型のモンスターが主流になっていますよね?
栢:人気タイトルの場合は普通のモンスター的なキャラクターを出し尽くしてしまって今の状況があるようにも思います。ただ、我々としてはまずは今のようなモンスターを中心としてゲームのシステム部分を推していこうと考えています。国民的ゲームというレベルにはまだ至っていませんが、それを目指して月島ファクトリーと共に頑張っています。
シグナルトークと月島ファクトリーの役割とは?
――本作はシグナルトークと月島ファクトリーの共同開発・提供という形で発表されていますが、両社の関係はどういったものなのでしょうか?
栢:シグナルトークがパブリッシャーで月島ファクトリーが開発会社となります。細かくいえば、私自身が企画原案をして月島ファクトリーがそれをゲームの形にしています。リリース後のアプリの運営も月島ファクトリーが担っています。ただ、我々の組み方は少々変わっているかもしれません。一般的にはパブリッシャーがお金を出して、開発会社の名前は前面に出てこないことが多いと思います。しかし、本作の場合は両社の名前を並列で出していこう、と考えています。
――月島ファクトリーと組んだ理由はどのようなものでしょうか?
栢:まず、弊社がゲームの開発を自社で行わずに開発会社と組むのは今回が初めてです。そこで、業界の方々にヒアリングしたりと、開発会社を調べました。最終的に10社以上の会社と話をして、その中から月島ファクトリーと組むことにしました。
――月島ファクトリーの日野昭宏さんが本作のゲーム開発のディレクションをされているとのことですが、日野さんとの話の中で合う部分があったということでしょうか?
栢:本作の企画を面白そうだと言って頂いたこともありますが、月島ファクトリーは大手ゲーム会社のタイトルの開発実績があったことも理由の一つです。聞けば皆さんがご存知のタイトルも手掛けられています。また、月島ファクトリーはオリジナルのボードゲームも作っているんです。ボードゲームを作るにはアイデアが必要ですし、そのような商品を作る力とモチベーションがある方々だということも理由です。
――ボードゲームは本作と通じる部分のあるゲームジャンルですね。
栢:はい。しかし、先方としてはビックリすること続きだったようです(笑) まず、一回の面談で決まったことに驚いていました。開発中のチェック頻度の少なさにも驚かれていました。最初は密に打ち合わせをさせて頂きましたが、具体的な開発に入ってからのチェック頻度は1ヶ月半や2ヶ月に1回程度だったんです。一般的には1週間に1回、せめて2週間に1回はチェックすると思いますが、今回私はそうしませんでした。月島ファクトリーからはチェックが少ないことで「逆に頑張りました!」と言われました(笑)
――面白いですね(笑) 逆にやる気が出たんですね。
栢:そういう意図はなかったんですけどね(笑) 私は元々、1時間に1回ぐらいチェックをしたくなるくらい、微に入り細に入り確認したくなるんです。ですが、それをやってしまうと月島ファクトリーにお任せした意味がなくなってしまいます。そこで、本作の開発においては、コンセプトがズレないようにという点に集中してチェックをしました。
――細かくチェックしたくなるお気持ちはよく分かります。
栢:もちろん色々と相談はしますが、チェックはそれほどしませんでした。それもあって、いくつかの仕様については私も知らなかったものが実装されていたりと、月島ファクトリーも力を入れて開発してくれています。
――話を変えてお聞きしますが、本作の地図データは、地図データを扱う企業から提供されたものなのでしょうか?
栢:いえ。オープンマップを使っています。有料マップを使うことも検討しましたが、コスト面などから現在のマップとなりました。
――オープンのマップがあるんですね。本作ではマップの拡大縮小ができませんが、それはオープンマップの仕様が理由なのでしょうか。個人的には広いエリアの勢力図を知りたいので、可能なら縮小表示したいんです。
栢:今の本作では拡大縮小はできませんが、より引いたマップを表示させるようなことは技術的には可能です。ただ、このマップを使うにもノウハウが必要で、開発陣は結構苦労したようです。マップにはAPIがあって、それを使って様々な形で出力できるようになっています。ですが、望む形で出力するなど、使いこなすのは大変でした。本作のマップ上には施設名などが表示されていますが、それ一つを取ってもノウハウが必要なんです。
(図:施設名や地名などはバトルステージのマップにも表示されています)
――なるほど。『Googleマップ』を使うことは検討されなかったのですか?
栢:Googleマップを使うことも可能ですが、法人が商用サービスで使う場合、1アクセスあたり幾ら、などの形でコストが発生するんです。単価は安いですし、払えない額ということもないと思いますし、ゆくゆくは切り替えたいという希望もありますが、それは本作がビジネス面でも上手く行けば、という話になると思います。というのも、アクセス単位でお金が発生しますから、例えば1時間プレイしただけでもあっという間にアクセス数が嵩みます。それがプレイヤーの数だけ発生しますから、プレイヤー数が万の単位になるとコストが大きなものになることが想像できると思います。
――確かにプレイヤー数が増えれば莫大な額になりますね。Googleマップならグローバルでプレイできて、より面白いかな、と思いましたので。海外旅行に行った時にもプレイできますし。
栢:例えば俺の最強軍団をシンガポールのど真ん中に置いてこよう!みたいな(笑)
――そうですそうです!(笑)
――地図についても今後のアップデートでも色々と進化したり変化する可能性もありそうですし、テリトリーモンスターズの今後に注目しています! 今日は興味深いお話をありがとうございました! 私自身、一プレイヤーとして本作のヒットを期待しています!
(聞き手:丸岡和人、長田卓也、文:長田卓也、編集:オクトバ編集部)
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