全世界27.62億DL!「Cheetah Mobile(チーターモバイル)」の成功の秘訣に迫る

スマホを使っていると、どうしても動きがもっさりしてきますよね。なんだか動きが鈍いなあ、と思ったとき、『Clean Master』を使って、ワンタップでお掃除する人多いんじゃないでしょうか?
全世界で6.6億ダウンロードという大人気アプリの『Clean Master』。
今回はこの『Clean Master』をリリースしている、KINGSOFT社に行って、取締役社長の馮達(フェンダ)氏にインタビューを行いました。
アプリリリースまでの経緯や世界のスマホセキュリティ事情など、興味深い話が盛りだくさんです。
最後には、なんと個人デベロッパーの世界デビューの話まで!?スマホユーザーは必見のインタビューです。
 

社員は3人から

 
 
――今日はよろしくお願いします。
 

フェンダ:よろしくお願いいたします。
 

――ちょうど、このインタビューのタイミングで、フェンダ様がキングソフト株式会社の社長に就任されるということで、おめでとうございます。
 

フェンダ:ありがとうございます。
 

――もう日本に来てから結構長いですよね?
 

フェンダ:はい、そうですね。2002年6月に初めて日本に来ました。
 

――もともとモバイル業界だったんですか?
 

フェンダ:もともとは大学卒業後、バックエンドのシステムの開発などをしていたんです。その時ちょうど東京のシステム開発会社で働く機会があって、それでワーキングビザをとって日本に来ました。
 

――そこから始まって、インターネット業界の中でずっとキャリアを積まれていったんですね。
 

フェンダ:そうですね、はい。
 

――でその後、KINGSOFTさんに来られた、と。
 

フェンダ:それが2006年ですね。子どもが2歳の時でしたが、仕事を探していたら、日本でちょうどキングソフト株式会社(中国のKingsoft Corporation Limited社の関連会社)という会社が、立ち上がったばかりで。
 

――そのタイミングで入社されたんですね。
 

フェンダ:そう、そのタイミングで応募して入社したんです。当時、会社はすごく少人数で、3、4人ぐらいしかいませんでした。
 

――社長はその頃からすでにいらっしゃったんですね。KINGSOFT社は、もういまや日本だけでもかなりの社員さんが在籍されてるじゃないですか。日本だけでどのくらいいらっしゃいますか?
 

フェンダ:今は106名です。
 

KINGSOFT入社のきっかけは

――3人だったところから始まり、いまや106名まで大きくなられたわけですね。素晴らしいですね。
 

フェンダ:私がKINGSOFTに入ったきっかけは、PHPなんです。私もともとPHPの開発をしてたので。
 

――ああ、プログラム言語のPHPですね。
(PHP:WEB上で動く掲示板などを作成するプログラム言語)
 

フェンダ:そうです。そのエンジニアをしていたので、開発のスキルを持っていたんです。その頃ちょうどKINGSOFTは、そういうシステム開発エンジニアが欲しかったんですね。だからそれがきっかけで入社して、そこからいろいろ開発の仕事をしていました。
 

――PHP開発をされてたんですね。PHPはオクトバもすごくお世話になってます。
 

フェンダ:そうですね。当時、中小企業やこういうベンチャー企業はほとんどPHPを使ってました。PHPはオープンソースですので。
 

『Clean Master』リリースに至るまで

――社員数3、4名の頃からKINGSOFTさんにいらして、日本のマーケティングなどをフェンダさんやその他の方々で一生懸命やっていらっしゃったと。
 

フェンダ:そうですね。少人数から始めた会社ですので、いろんな分野に携わっていました。いろいろな製品で最前線での経験をしました。
 

――素晴らしいですね。確か、iPhoneが出始めたのが2008年か9年ぐらいだったと思うので、スマートフォンのアプリが実際に出始めたのもそれくらいの時期だったと思います。
 
その2、3年前からKINGSOFTさんはやってらして、アプリの普及期とかも全部見られてますよね。その中で、今御社のアプリの中でも非常に有名な『Clean Master』を手掛け始めたのって、どのタイミングからなんでしょう?

 

フェンダ:多分、手掛け始めたのは2011年、12年ぐらいですね。ちょうどAndroidフォンが普及し始めた頃です。当時、弊社もPCの製品をどんどんリリースしていて、結構成長してきてた時期でした。
でもその時、やっぱりこれからはスマホの時代だっていうことに気づいて、何とかスマホのアプリ製品も出しましょう、という戦略を立てたんです。それで、当時の開発チームが自社でいくつかアプリを開発してました。
 
でも最終的には、今の本社の「Cheetah Mobile(チーターモバイル)」、当時は「キングソフトセキュリティネットワーク」という社名でインターネットセキュリティソフトウェア作っていた会社だったんですけど、ここのモバイル変換ですごく成功した、『Clean Master』を製品としてリリースしたんですね。
 
それで、Cheetah Mobileの開発メンバーは人数が多くて技術力も高く優れている。だからCheetah Mobileと相談して、日本の展開は一緒にやりましょうということになりました。
それでこの製品の、日本のマーケティングや製品ローカライズなどから一緒に始めたんです。それが2013年ですね。当時『Clean Master』は、日本のユーザーはまだ20万ぐらいしかいなかったんですよ。
 

『Clean Master』って何ができるの?

 

 
 
――3年ぐらいかけて、20万人から今のダウンロード数まで伸ばされていったっていうことなんですね。
ではちょっと『Clean Master』についてお伺いします。『Clean Master』というアプリ自体知らない読者さんもいらっしゃると思いますので、一度最初から教えていただきたいんですけれども、どういった機能をお持ちのアプリなんでしょうか?

 

フェンダ:iPhoneと違って、Androidのアプリは結構OSの深いところまで操作できます。
そうすると、インストールしたいろんなアプリが結構メモリを食っているとか、いろんなファイル見ているとか、あと不要ファイルをいっぱい生成していたりするんです。それで使っているうちに重くなるとか、遅くなるとかそういう現象が出てくるんですね。
 
そこで、『Clean Master』は主に、スマホをもっと軽く動作させるための最適化の操作をしているんです。例えば、不要ファイルのスキャンをして「削除しますか?」と聞いてきます。ここで同意したら、不要ファイルを全部一括で削除します。
それによってメモリとか容量とか、いろんなところで軽くなるので、ユーザーとしては軽くなる・動作が速くなるということを実感します。
 

全世界での莫大なインストール数

――分かりました。それで、そちらを本社で開発して、2013年に日本に持って来られましたが、現時点でインストール数はどのくらいでしょうか?
 

フェンダ:シリーズ累計では19.5億インストールです。
 

――19.5億、すごい!(※現在は27.62億)
 

フェンダ:ダウンロード数も17億ですね。『Clean Master』ひとつではなくて、Cheetah Mobileが開発したアプリのシリーズ累計です。現在指標として重視しているのはMAUなんです。
 
(MAU : Monthly Active Users 月間アクティブユーザー
     一ヶ月の間に一回でも利用や活動のあった利用者の数や割合)
 
やっぱりリリースしてからが長い分、インストールしてアンインストールする人もたくさんいますので。
 

――ちなみにMAUは公表されているんですか?
 

フェンダ:はい。今5.6億MAUです。
 

――すごいですね、5.6億!
 

フェンダ:これは、第4クォーターのときの数字ですね。去年の12月(2015年12月)のです。(※偏在は6.5億MAU 2016年4月時点)
 

――ちなみにこの中で日本単体だとどのくらいでしょうか?
 

フェンダ:今日本のユーザーのMAUは、シリーズ合計で800万近いですね。
 

――すごいですね、800万MAU。これだけMAUがあれば日本国内でも相当の方が使ってらっしゃいますね。全世界で5.6億MAUで、その中で大きな市場と言うと中国、米国かもしれないんですけど、日本と中国と米国との比率は出してらっしゃいますか?
 

フェンダ:国別比率の正式公表はしていませんが、主にユーザー数が多い国として米国とインドです。
 

――そうなんですね。インドはちょっと意外でした。
 

フェンダ:あとロシアもです。これも中国以外ですね。中国ももちろん多いんですけど。
 

――中国を含めると、中国、米国、インドが主要国という感じなんですね。
 

フェンダ:人口が多いので、市場規模も大きいんですね。
 

――インドも中国も10億人以上ですよね、人口自体が。
 

フェンダ:あとAndroidフォンの比率が高い。それが大きいですね。
 

『Clean Master』人気の理由

――先ほど『Clean Master』が生まれた経緯も少し教えていただきましたが、もともとは親会社がそういったセキュリティやキャッシュをクリーニングするPC向けのソフトウェアを開発されていたんですよね?それをモバイルに展開したっていうことが経緯という感じですか?
 

フェンダ:そうですね。ファイルを高速でスキャンする技術など、セキュリティソフトの技術を応用して使っているんです。
 

――もちろん機能が優れていて内容が素晴らしいということもあると思うんですけど、ここまで人気が出るようになったきっかけは何でしょうか?ここがきっかけだったんじゃないのかなど、思い当たるところってありますでしょうか?
 

フェンダ:ユーザーのニーズですね。Androidフォンは今はスペックが高くて、以前より徐々に進化しています。でも2、3年前のOSがまだ古いとき、あともっとAndroidフォンのスペックが低かったときは、iPhoneと比べると重い、動作が鈍いっていう悩みがどうしてもあったんですね。
そうするとやっぱりどのユーザーも速くしたくなる。そういうアプリが必要になるんですね。
そういった機能があるアプリを一旦使ったら、おそらく離れられない。ユーザーとそういったアプリとの粘度が高いということです。
 

――粘度というのは、密着度や親和性みたいなことですね。
 

フェンダ:密着度、そうですね。密着度が高いということですね。あとは、これは個人的な考えですが、暇なときってスマホをよく触るじゃないですか。その時に、このアプリを開いて一回クリアしたくなる。人間って綺麗好きな傾向があるかなと思うんです。
 

――スマホの中をきれいにしたい、っていうことですね。
 

フェンダ:ワンタップで簡単にできるので、スマホを触っているときはついでにこのアプリも開きますよね。
 

――ついでにきれいにしておこう、みたいな感じですね。
 

フェンダ:一発でクリアしたときの快感があるんですね。爽快感。
 

――掃除した後の気持ちよさみたいなやつですね。
 

フェンダ:そうです。それでおそらく、すごくダウンロード数が増えたと考えています。あとは、口コミで広げていったことも一つあります。それからマーケティングも大事です。グローバルでマーケティングしたり、様々な手法でプロモーションしたり。
 

シャオミモデルが成功の秘訣

――ちなみに、マーケティングでこれはすごいよかった、というのを教えていただけますか?
 

フェンダ:日本では行っていませんが、海外ではファンイベントがあります。
 

――ファンイベント?
 

フェンダ:海外の場合、Clean Masterはいろんな言語のバージョンがあるんですよね。この言語はクラウドを使って、一般のユーザーでも翻訳できるようになっています。そうすると、ユーザー参加型の製品作りになるんですね。
 

海外にはそういった『Clean Master』の(製品作りに参加したい)ファンがいっぱいいますね。それで、会社としてこのファンを集めて定期的にイベントを行っています。
 

――そこでユーザーの意見をまた集めてそれをまた活かして、ということですね。それを繰り返したということなんですね。
 

フェンダ:このようなモデルは中国では「シャオミモデル」と言われています。
 

――ああ、そうですよね。
 

フェンダ:同じグループですので、すごく浸透して。
 

――シャオミとは同じグループなんですか?
 

フェンダ:シャオミ(小米科技)とは同じ会長なんですよ。レイ(雷軍氏)さんはKINGSOFTの会長なんです。
 

(※編集部注:シャオミは元キングソフト(金山軟件)会長兼CEOであった雷軍(Lei Jun)氏が2010年に創業したスマートフォンメーカー。創業5年で1兆円の売上を達成した。)
 

――ああ、そういうことですね。
 

フェンダ:はい、私たちKINGSOFTはシャオミと兄弟のような間柄なんですよ。中国ではシャオミモデルの成功の理由は、口コミやファンを大事にするという企業の姿勢であると言われています。
 

『Clean Master』以外の製品は?

――『Clean Master』以外にも御社はたくさんいろんな優れたアプリ出されていると思うんですけども、他にどういったアプリがありますか?
 

フェンダ:Clean Masterシリーズであれば、例えば『CM Security』『バッテリードクター』など、主にユーティリティ系のアプリをリリースしています。
 
あと、最近ヒットしたのは、『ピアノタイル2』。これもCheetah Mobileが開発した製品です。Cheetah Mobileは、製品力が非常に高い。この製品力で、数多くのユーザーを集めたんです。
 
それともう一つ、これはKINGSOFTの別事業の延長なんですけど、KINGSOFT Officeのアンドロイド版『KINGSOFT Office Premium』です。KINGSOFT OfficeなどのPCソフトウェアも日本である程度のシェアを持っています。これはWPSというブランドの、パートナー会社がアンドロイド版を開発しており、日本のKINGSOFTでは日本向けのローカライズを担当しています。iOS版もあるんですよ。
 
これは『Clean Master』ほどユーザーは多くないんですが、ビジネスユーザー向けにはすごく便利なアプリですね。購入したユーザーには、PC版とAndroid版とiOS版をセットで提供しています。
 

これらは主にコンシューマ向けの製品ですが、あと二つ「WowTalk」「CAMCARD」は主に法人向けサービスです。で、特に「CAMCARD」の方は本社が中国の会社なんです。彼らは、世界最先端のOCR技術を持っているんですね。でも彼らは海外展開において日本市場にあまりよく知らなかったので、パートナシップを結び、日本の独占代理権はKINGSOFTが持つことになりました。
 
これは主に、名刺の管理アプリなんです。名刺のデータをデジタル化してそれを管理するんですけど、個人版ユーザーも結構日本のユーザーには多いです。法人向けは主に企業向けの名刺管理ソリューションを提供しています。
 

『CM Security』がリリースされた経緯

――先ほど少しお話にも出てたんですが、Clean Masterシリーズの中でも、『ピアノタイル2』とか、あと『CM Security』とかを推されているのかな、と思ったんですけれども。
 

フェンダ:はい。『CM Security』のほうは主に、Androidのセキュリティメインですね。『Clean Master』がユーティリティのほうのアプリなんですけど、『CM Security』は主にアンチウィルスとか、あと盗難防止とか、そういう具体的な機能を搭載しています。
 

――ちなみに、『CM Security』のセキュリティ機能も、もともと本社のほうで作られていたものを応用したんですか?
 

フェンダ:はい、そうですね。
 

――どういった経緯でそのセキュリティソフトを作られたんですか?それから『ピアノタイル2』についてもそうなんですけど、横に広げていくときの選定の基準などについても、少しお伺いできれば。
 

フェンダ:もともとCheetah MobileはPC向けのセキュリティソフト、アンチウィルスソフトである「KINGSOFT Internet Security」を10年以上開発してきた会社です。『CM Security』は、Android端末が世に広まると、モバイル端末対応のセキュリティアプリが必要ということで、Android端末向けのセキュリティ製品を開発したものです。
 
最初に作ったアプリは、『KINGSOFT Mobile Security』でした。これをグローバル展開する際、すでに『Clean Master』のブランド力があったので、それに合わせて『CM Security』(CM=Clean Master)という製品名にしました。
 
ブランドを変えて、あとはユーザーエクスペリエンスの、UIの部分にもかなり手を加えました。『Clean Master』が持つ「使いやすさ、手軽さ」に近づくように改善を重ねました。ユーザーにとって、もっとシンプルな形にしたんです。
 

――では、『Clean Master』のユーザーが使いやすいように調整して、『CM Security』として出された、ということなんですね。
 

フェンダ:そうですね。順番としては、『Clean Master』を先にリリースしてたんですね。そこで一気にユーザー数が伸びました。その次は、この技術にモバイルセキュリティ技術を加えた、『CM Security』という製品をリリースしました。
 
つまり、UIや名前の部分は『Clean Master』をモデルに、技術面はCheetah Mobileの特徴を生かしています。Cheetah Mobileは、セキュリティ分野で技術力と経験値がトップレベルです。
 

セキュリティに対する日本と海外の違い

――Cheetah Mobileの技術を、『Clean Master』のユーザーに馴染みやすいようにカスタマイズして出されたのが、『CM Security』なんですね。ちなみに『CM Security』だけだと、今どのくらいのMAUとかインストール数がありますか?
 

フェンダ:『CM Security』は今、インストール数は1億以上です。
 

――素晴らしいですね。
 

フェンダ:セキュリティアプリとユーティリティアプリは、ユーザーニーズが違います。セキュリティアプリが必要という意識が、海外に比べると日本のユーザーはまだ低いんですね。日本のAndroidのセキュリティ環境は、どちらかというと安全なんですよ。ウィルスアプリとか少ないですし。
 

――そうなんですね。
 

フェンダ:海外のほうがずっと多いです。
 

――日本にいるとその感覚がないですね。
 

フェンダ:ですので、日本ではセキュリティアプリの使用頻度やユーザー数も全体的に低めです。この前見た調査なんですが、海外、ブラジルやチリなどの国では、みんなセキュリティ機能を使っているようです。
 

フェンダ:この製品の中でよく使われている機能が、「アプリロック」という機能です。これは盗難防止の機能なんですが、プライバシー保護もできます。各アプリにパスコードをつけるっていう機能なんです。
 

――アプリごとにパスワードを決められたりする機能ですね。
 

フェンダ:日本だとこういう機能が必要な人は一部だけかもしれないですけど、インドとかそういう国であれば、何人かで1台のスマホを共用、一緒に使うケースがあるんです。
 

――それもちょっと驚きですね。
 

フェンダ:発展途上国では、スマホはやっぱりまだ珍しく高価なものなんです。家族で1台を使うなど、よくあることのようです。例えば、親戚など一緒に住んでいる人同士で使うとか。
 

――そうするとアプリロックとか必要ですね、確かに。
 

フェンダ:国によってそういうニーズがあります。
 

中国におけるアプリ市場

――今ちょうど国によってのアプリ市場の違いのお話が出たので、少しまた国ごとの特徴をお伺いしたいと思います。
AppAnnie社の調査によると、2016年の第1クォーターにおいて中国のiOSのAppStoreの収益額が世界で2位になったそうです。1位は米国で2位に中国ということですが、中国は1年間で大体2.2倍ほど伸びたそうで、このペースでいくと数四半期後には米国も抜くんじゃないか、とのことでした。
 
実際フェンダ様から見て中国市場の伸び、例えば『Clean Master』の数値などからでも、肌感覚としてすごく伸びてるな、という印象はありますでしょうか?

 

フェンダ:はい、そうですね。中国のiOS、iPhoneのユーザー数は、急速に増えてますね。その一つの原因としては、今各キャリアともiPhoneの販売を促進していることにあります。あと、価格も徐々に下がっている傾向が見られます。昔ほどすごく高価なものではなくなりつつあります。
 
iPhoneは最初出たとき、中国ではあまり正式販売してなかったので、ほとんどのスマホユーザーはAndroidフォンだったんです。しかし今はAndroidユーザーが徐々にiPhoneに切り替えをしているんです。それも、iPhoneユーザーが増えたことの、一つの大きな要因ですね。それに合わせてAppStoreの課金などが増えています。
 
またアプリの作者がiOSのアプリをたくさん作るようになりましたね。昔、アプリ作者はAndroidメインで開発していた背景がありました。
でも中国ではやはりAndroidユーザーも多いので、現在でもユーザーが増加しています。課金額ももちろん上がってますね。
 

今後の展開

――ios、androidともに非常に伸びている中国のアプリ市場の中で、例えば先日リリースされた『ピアノタイル2』などは、両OSで出されてかつランキングもかなり上位にいたと思います。
 
そういう「両OSで需要のあるアプリのリリース」ということと「ツール以外にもいろいろと挑戦していく」ということが、御社の今後の方針なのかと私個人としては思ったんですが、今後の展開はどういったふうに考えてらっしゃるんでしょうか?

 

フェンダ:これからも引き続き良い製品を作っていく、ユーザーに愛用される製品を作っていくのが、一番大事なことです。そしてビジネスモデルとしてはすべて無料で提供するんです。
 
ただマネタイズの関係上、どうしても広告が入るようになってしまいます。スマホに特化したモバイル広告ビジネスも、これからすごく成長する分野の一つであり、大きなポイントです。
 
この分野に関しては現在、本社のCheetah mobileも日本のKINGSOFTも非常に注力していて、スマホに特化したアドプラットフォームを展開しています。
他社とは違う私たちが持っている強みの一つは、メイン媒体が自社アプリである、ということです。広告主の出稿が少なくても、メイン媒体が自社にありますので、出された広告は保証できるのです。

あともう一つは、ビッグデータ分析です。独自に「フェイスマーク」という、分析システムを開発してるんです。ビッグデータを分析し、事業戦略としてビッグデータを活用しています。シリコンバレーでは、開発拠点を構築しているんです。米国で一番優秀なデータサイエンティストを集めて、この分野の開発を進めています。
 

――フェイスマークというのは、ユーザーの個人情報を一切収集することなく、ユーザーの利用習慣に基づき行動ターゲティングによって広告配信を実現する技術ということですね。

 

フェンダ:『Clean Master』の特長として、ユーザーの使っているアプリの中の不要ファイルを検知することができるんです。この不要ファイルから分析して、そのユーザーの大体の属性や趣味嗜好を、ある程度アルゴリズムで算出できる。それでセグメントやデモグラフィを作れるんですね。広告主が出稿するときは、セグメントを指定できます。(指定しなくても、システムが自動で最適化を行っていますので、精度は高いです)
 

――例えば若い女性だけに出したいとか、中年の男性だけに出したいとか、そういうことができるようになってくるっていうことですね。
 

フェンダ:はい、その通りです。こういうシステム、広告配信プラットフォームを作るときの仕様などをいろいろ決めるとき、参考にしたことがあります。
昔、自社製品のマーケティングに注力していた時、『Clean Master』のプロモーションにとても苦労しました。例えば広告予算をかけても、出す場所によって効果が全然違うし、たまにトラブルになってしまうこともある。例えばどこに出ているとか、あるいは実際の広告文言といったクリエイティブの部分ですね。
 

日本と異なり、海外ではこういうデジタルマーケティングがまだ発展途上で、あまり規制とかないんです。そうすると、デジタルマーケティング担当者は困ってしまうんですね。より効果がある広告出稿ができるかどうか分からない。
そこで、私どもの「チーターアドプラットフォーム」により、そういうマーケターたちの懸念点をクリアし、よりよいサービスを提供することが可能なんです。
 

チーターアドプラットフォームについて

――費用対効果を高めてあげるということですよね。もちろんセグメントが切れれば切れるほど効果が高くなりますよね。
今のお話ですと、チーターアドプラットフォームという取り組みをされている中のビッグデータということなのかな、と思ったんですけど、そういう認識で合っておりますか?

 

フェンダ:はい、おっしゃるとおりです。
 

――チーターアドプラットフォーム自体は、アドプラットフォームとしてもこれから展開されていく、注力されていく事業領域なのかなと思います。例えばデベロッパーが御社のチーターアドプラットフォームのSDKを組み込むとしたら、そのデベロッパーさんにとってのメリットはどういった部分があるでしょうか?
 

フェンダ:アドプラットフォームは現在、多くの広告主様から広告出稿をいただいております。全世界で非常に注目されていて、広告出稿の案件も多いのですが、今自社媒体だけなのでもっと広げていきたいと感じています。
そこで、私たちも一つのネットワークを作りたいと考えています。いいアプリなのにマネタイズで困っているデベロッパー様は、弊社のSDKを組み込むことで、広告収入でマネタイズが可能になります。
SSPサービスも現在展開しています。私どものSDKにすると、媒体側にメリットが出せるように考えています。

――あとは、海外で培っているノウハウや案件がチーターアドプラットフォーム上で流れることもある、ということですよね。
 
フェンダ:チーター アド プラットフォームは、グローバルに展開しているアドプラットフォームですので、自国以外に配信したいビッグクライアントもいらっしゃいます。ゲームを日本にも配信したい、というような案件も多いんですね。
チーターアドプラットフォームは海外に広告配信をする際、すごくいいチャネルになると考えています。日本の企業で、海外のユーザーを獲得したい場合や、あとはアプリのデベロッパーは日本人で、ユーザーは海外の方が多い、というケースは特にお役に立てるのではないかと考えています。
 
フェンダ:日本のゲームや音楽、映画は海外でとても人気があるんですね。ですので海外で自然流入はもちろんあるんですが、もしプロモーションをしたら、さらに相乗効果で増えるスピードが全然違うかもしれません。
そこでチーターアドプラットフォームを経由すると、海外では広告費がすごく安く抑えられます。その点においても、お役に立てるのではないかと考えています。
 

『ピアノタイル2』大ヒットの裏側

――確かに日本のデベロッパーさんは、国内で完結してしまっている方もいらっしゃいますね。
せっかく作ったのであればローカライズして、例えばチーターアドプラットフォームに出稿するとか、他のチャネルもたくさんあると思うんです。そういったことをされてもいいんじゃないのかな、というのは個人的にもすごく思っています。

 
フェンダ:そうですね。あと、日本のアプリデベロッパー様へ、一つアドバイスさせていただくとしたら、海外で展開するための海外向けのパブリッシングは、他のところと提携してやったほうがいい、ということですね。独自で実施するのは難しいところがあると思います。
で、弊社も海外向けのパブリッシング分野のノウハウがあるんですね。例としては『ピアノタイル2』です。
 
――はい、本当にすごかったですよね。多くの国で1位とってましたよね。
 
フェンダ:『ピアノタイル』はもともと、2人の開発者によって作られました。ただ、彼らは困ってたんですよ。自分たちで開発して、Google PlayやAppStoreで公開して、ある程度ユーザーは集めたが、マネタイズのやり方が分からなかったんです。本当に個人ベースでやっているアプリだったんですね。
それでCheetah Mobileと出会って、最初はプロモーション、プロデュースを提案して一緒にやってたんです。最初は投資をして、一緒にやってある程度成長したところで、2人の作者がこれ以上成長は見込めない、もうやめて別のことやりたい、別の製品を作りたい、と言い出したのです。
 
もうこの製品をあきらめるというので、Cheetah Mobileはこの製品を買収することにしました。開発者自身がやりたくないのであれば、私たちが買って、もともと製品を開発する経験があるチームにやってもらえばいい。リソースはありますから。それで『ピアノタイル2』が開発されました。この改良版の「2」のほうが一気にヒットしたんですね。
 
――ピアノタイル1と2はアプリ自体分かれてるんですか?
 

フェンダ:はい、分かれてます。
 

日本の個人デベロッパーに向けて

――「1」のコンセプトを引き継いだ「2」を作ったら、世界中で大ヒットしたんですね。
 

フェンダ:そうなんです。プレイしていただくと分かっていただけると思うんですが、1のほうは本当に個人の開発者2人で作ったものなんですね。やはりちょっと差があるんです。面白さとか、動作、音楽とか、全然違うんですね。日本にもアプリの個人開発者の方って、結構多いんですよね。
 

――多いですね。
 

フェンダ:みなさんすごく独自で頑張っていらっしゃいます。いいアイデアもお持ちです。もしかしたら足りないことは、プロモーション資金かもしれません。あとはマーケットですね。日本では競争が激しいんですが、海外では日本ほど激しくないですよ。
 
――逆にですか?
 

フェンダ:日本はレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)でも、もしかしたらこのアプリが海外に行くとブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)になるかもしれません。
 
そういうところを弊社に相談していただければ分析します。私たちは全世界のユーザーというビッグデータを持っていますので、どこの国のユーザーはどのジャンルの、例えばこういうゲームやアプリに興味があるとか、そういった調査や研究が行えます。研究チームがあるんです。
さらにポテンシャルがあるのならば、パブリッシングも可能です。そういうチャンスがあるんです。
 

――すごいですね。それは日本の個人デベロッパーにもいいですよね。
 

フェンダ:はい。ぜひチャレンジしていただきたいですね。そうじゃないともったいないです。しかも、iOSのアプリであれば広告の制限も徐々に厳しくなりますよね。それが不利になるのは、アプリの開発者だけなんです。でもそれは、転機が来るチャンスかもしれないですね。海外に進出するという新しいアプローチです。
 

――個人デベロッパーにとっても、少し夢のある話になりますね。
 

フェンダ:『ピアノタイル』がすごくいい例ですね。あと『Photo Grid』というアプリもそうだったんです。写真の加工アプリですね。
中国の個人開発者のアプリだったのですが、海外のほうがユーザーが多かったですね。結果としては買収しましたが。
 

――つまり、その後にマーケティングとかノウハウを入れて、普及させたということですね。
 

フェンダ:アプリなどの製品は、最初のアイデアとか最初の段階では恐らく開発者、作者の力が大事なんですけど、その後はユーザーが大事です。ユーザーのいろいろなフィードバックによって製品を改善していくんです。実際のユーザーの意見は、製品の成長をかなり左右します。何万ユーザーと何百万ユーザーとでは、そこで集めたユーザーの声が違うんです。
 

――そうですよね、確かに。
――わかりました。本日はありがとうございました。
 
 

社員3人の会社から始まって、今やスマホを代表するアプリをリリースする企業へと発展したKINGSOFT社。すごいですね。
アプリが大ヒットした経緯や理由なども実に興味深いです。
『Clean Master』は前の端末ではインストールしたけど、今の端末には入れてないなあ、なんていうあなた。
常に発展し続けている『Clean Master』は、実にいろいろなことができるようになっていますよ。
ぜひもう一度インストールして、その便利さを味わってみてください。
 
 

取材協力:キングソフト株式会社
(キングソフト社への各種問合せは上記URLに記載の電話番号から可能です。)