2020年8月に最新作『なめこ栽培キットDeluxe 極』がリリースされ、ますます繁殖する「なめこ」シリーズ。その裏側を探るべく、開発元である株式会社ビーワークスの伴氏(ゲーム事業部プロデュースグループ課長)と河合氏(ゲーム事業部開発グループ課長)にインタビューしました。
左:株式会社ビーワークス ゲーム事業部プロデュースグループ課長 伴 雄斗氏
右:株式会社ビーワークス ゲーム事業部開発グループ課長 河合 真吾氏
なぜ探偵助手がなめこ?
ー『なめこ栽培キット』のなめこ、今さらながらなぜなめこをフィーチャーしたのかを教えてください。
伴:もともとは弊社が開発担当した、DS用ゲーム『おさわり探偵 小沢里奈』の助手として設定したのが、このなめこです。
もともとは別のゲームの企画がありまして、そこでゲームの序盤で頻出する雑魚キャラとして描かれていたきのこがパブリッシャーから好評をいただきました。そのゲーム自体はお蔵入りになったのですが、アドベンチャーゲームをそのビジュアルでやりたいというお話を受け、浮上したのが『おさわり探偵 小沢里奈』です。
探偵モノならば相棒が必要、それならばあのきのこのキャラを助手にしよう、と提案を受けたのがそもそものきっかけです
河合:『おさわり探偵 小沢里奈』は、初めから助手がきのこという設定ありきでした。一体どんな世界観になるのか、そのときは想像もできませんでした(笑)
伴:河合はもともとこのキャラはきのこをイメージして描きました。着色の際に色合いをしいたけでイメージしていたのですが、どういうわけか企画書のキャラクター名として「なめこ」と書いてしまい、なめこになってしまった……という経緯です。
河合:色的にはなめこではないのですが。なぜなめこと書いてしまったのか、自分でもよくわかりません(苦笑)。
伴:そんな経緯でなめこというキャラが確立しまして、弊社から『小沢里奈』のアプリをリリースする際に宣伝のために別アプリを作ろう、となった際、助手のなめこを使うことになりました。それが、『なめこ栽培キット』の始まりです。
という経緯もあり、最初の段階でアドベンチャーゲームのお話をいただけていなかったら世に出られず、その後も幾多の絶滅の危機を乗り越えて現在の展開につながっています。
『なめこ栽培キットDeluxe』消滅の危機?
ー『なめこ栽培キットDeluxe』を『なめこ栽培キットDeluxe 極(きわみ)』として新規リリースした理由を教えてください。
河合:『なめこ栽培キットDeluxe』は2012年にリリースしましたので、システムが古くなってしまい、容量が足りなくなってしまいました。それに加え、その後にもいくつかのアプリをリリースしたり社内システムといった関係で、アプリ自体に手を加えられなくなってしまいました。それによって更新も止まってしまい、ストアからリジェクト(取り下げ)の告知が来たりという状況になってしまいました。
こうした事情を受け、どうせならばもっと楽しんでいただけるようにバージョンアップではなく、新規で開発してリリースしよう、となりました。
また、「極」という名前のおかげで、進歩を感じてもらえるほか、休眠ユーザーへの訴求も新規リリースの理由として挙げられます。
なお、普通に遊ぶだけなら2年もつだけの内容にしましたので、「極」という名前は伊達ではないと自負しています。
ユニセックスなゲームとして定着
ーだいぶ歴史が積み重なってきた「なめこ栽培キット」ですが、ユーザーの性別や年齢層などに特徴はありますか?
伴:なめこシリーズ全体の傾向は、6〜7割が女性です。ゲーム自体に競争的な要素がないのでキャラクターへの思い入れの強さが女性の支持を得られているのではないかと思います。とはいえ、なめこシリーズ自体はターゲットを女性、男性としぼらずにユニセックスなものとして考えています。
年齢層ですが、30〜40代がメインのようです。初動は興味を持たれやすいので、若い人の食いつきがいいのですが、リリースから時間が経つにつれて年齢層は上がる……これはどんなアプリにもあてはまるのですが、なめこシリーズもその例に漏れず、といったところでしょうか。
ユーザーライクな姿勢も人気の一因
ー「なめこ栽培キット」シリーズ『なめこの巣』ではTwitterで賞(「巣」のスクショコンテスト)を募集したりと、ユーザーとのコミュニケーションを重視している印象ですが、それに関して留意している点はありますか?
伴:『なめこの巣』のコンテストについてですが、農園系のアプリは「他のプレーヤーの庭や畑を見られる」のが楽しみのひとつ、ということがわかっていました。しかし、実装するのは結構大変で運用するにもコストがかかるため、擬似的に他のプレーヤーの巣を見られるようにTwitterでやってみた、という次第です。
河合:コミュニケーションという部分で言いますと、『なめこ栽培キットDeluxe 極』に搭載された「なめこのロック機能」は、前作のユーザーの意見を取り入れたものです。
前作の『なめこ栽培キットDeluxe』が2012年から2019年の7年間続いて、ユーザーも弊社も「なめことはこういものだ」という認識ができ、おかげさまで意外とクレームの類は運用が長期化するにつれ減っていました。よって、『なめこ栽培キットDeluxe 極』に関しては、プレイのしやすさを改善する施策に集中しています。
なめこパワー、やはり恐るべし!
ークラウドファンディングに取り組んでおられますが、その意図は?
伴:もともと弊社ではマーチャンダイジングはしておらず、なめこのキャラクターパワーに任せて各社に版権許諾をおろしているという状態で進んでいたのですが、さらになめこを浸透させようということで、自分たちでできるクラウドファンディングの利用を始めました。
第一弾の「なめこ4コマ『なめよん』単行本未収録エピソード 書籍化プロジェクト」、続いての「リアルなめこ 初めてのグッズ化プロジェクト」は、おかげさまで1000万円以上の支援をいただき、製品化できました。ちなみに「なめよん」のプロジェクトは、クラウドファンディング元のキャンプファイヤーさんの年間アワードをいただくなど、支援と同時になめこの認知度の向上にもつなげられたのではないかと考えています。
ーちなみに「なめこタイムDX(なめよん)」は毎週更新されていますが、大変ですよね?
伴:さすがに400話続いている(インタビュー時点)ので、大変ですね。私がネーム(ストーリー)を担当し、河合が作画担当という分業体制で作業しています。
河合:長く続きすぎて最近は難産の傾向です。なんとかネタをひねりだそうと時事ネタをチェックし続ける日々です。もう少しTwitterでバズってくれるとありがたいですね(笑)。
世界にはばたく!?なめこ
ー最後に今後の展開について教えていただけますでしょうか
伴:なめこで人を集められる、なめこのキャラクターパワーをさらに実感できましたので、今後はそれをどう外に向けていくかを考えています。
『なめこ栽培キットDeluxe 極』では、これまでなめこに興味はあるけれども、ゲームを始めるには至っていないという人へのリーチができたのではないかと思います。
ただ、それはなめこというキャラクターを知っている人の話、現状の認知度があるがためのものです。そこから脱却するためにYouTubeやクラウドファンディング、そして広告といったチャンネルを通じて、新規層の取り込みを狙います。
それに加え、海外、とくに台湾、香港、中国での普及に力を入れたいと考えています。現状は香港での人気が高まっているので、それ以外の国でもチャンスはあるかと思っています。
ー日本を飛び出し活躍するなめこの姿、期待しています!