アンドロイドの論点 : 「CESから読み解くアンドロイドの2011年のトレンド」

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ご無沙汰しておりますgamellaです。好評いただいております「アンドロイドの論点」ですが、米国ラスベガスで行われた家電の展示会であるCESでアンドロイドに関わる大きな発表がいくつかありました。今回はこちらからgamellaが気になった3つのトピックを紹介したいと思います。

MicrosoftがARM CPU対応のWindowsを発表

昨年からアンドロイドがさまざまな端末に搭載されはじめてきましたが、今回のCESではとりあえずアンドロイドを搭載しましたというレベルのプロダクトではなく、商品化を前提としたアンドロイド搭載端末が増えてきた印象を持ちました。特に去年リリースされたGoogle TVに米国で大きなシェアをにぎるVISIOが参入してきました。

もともとVISIOは、ファブレスメーカーと呼ばれる自社工場を持たずに商品の企画とデザインをだけを行い、製造は外部の会社を利用する形式の企業です。このようなファブレスメーカーにとって、難しいのが他社との差別化を行うための技術を開発することで、どうしてもデザインがそこそこ良くて安いものを大量に作る方向になりがちになります。しかし、Google TVという競争力のあるプラットフォームがどのメーカーでも利用可能になったことで、VISIOのようなファブレスメーカーにとっても大きな差別化のチャンスが産まれました。さらにVIZIO向けのアンドロインドアプリケーションストアも開設するということで、これからますます動きが激しくなりそうです。

アンドロイドの強みとして、ARMというモバイル用途に適したCPUで動作することを前提にOSが最適化されていることが挙げられます。例えば、アンドロイドのアプリケーション実行環境はアプリケーションを実行するときに、そのアプリケーションの実行コードの一部をCPUに最適化した実行コードに変換するJIT(Just-In-Time)と呼ばれる機能を備えています。アンドロイドのJIT機能はAndroid OS 2.2以降さらに強化されており、Android OSの完成度が向上したと言われるのもまさにこの実行スピードが向上したためなのですが、このJIT機能もAndroidではARM CPU向けにかなり最適化されています。このARM CPUは低電力で動作させることができることから家電などでよく利用されており、そのCPUとの親和性が高いことがアンドロイドの大きな強みでした。

そして、MicrosoftがCESでこの強みに対抗策を打ち出してきました。Windows 7の次のバージョンと考えられているWindows 8では今までのX86と呼ばれるPC向けCPUだけではなく、ARM CPU向けに動作するバージョンを作ることを発表したのです。

これはまさにアンドロイドの特にタブレットを意識した動きであり、PC向けに一番のシェアを誇るWindowsが参入することで、iPhoneのiOS、Googleのアンドロイド、MSのWindowsのシェア争いがARM CPU上でも開始することになります。この競争ではだいぶ出遅れた感があるMSですが、もともと非常に資本力も技術力もある企業なので、これからあっと驚く動きを見せてくれるかもしれず、非常に今後の展開が楽しみです。

Googleがタブレット端末向けの「Android 3.0」のUIを公開

Googleはタブレット端末向けのAndroid 3.0のUIを公開しました。以下の動画をまず見ていただきたいと思います。

かなり大きな変更があると思われますが、まだ詳細は分からない部分も多いため、動画を見ながら気になった部分を箇条書きにしてみました。

  • 一枚のページに多くの情報がさらに詰め込まれるようになり、スマートフォン版と比較するとかなりPCのUIと似た方向に進化した。iOSがiPhoneとiPadでほとんど変わらない一貫性のあるUIを提供しているのとは対照的に、明らかにアンドロイドタブレットはPCとの置換えを狙った機能を提供していると思われる。
  • ブラウザもよりPCサイドのGoogle Chromeの挙動に近付いている。これは、Googleがブラウザの開発リソースを集中化させ、ブラウザにおけるユーザ体験をPCとAndroidで異なるものにしないようにする戦略が見える。
  • Google Books、Gmail、Google TalkのようなGoogleが提供するアプリの完成度も向上するようである。特にアンドロイドはGmailアプリの出来があまり良くないと言われることも多く、その部分にきちんと手が入ったのは、アンドロイドをユーザがカスタマイズしなくてもある程度のユーザ体験を保証できるようにする意図があると思われる。
  • Google Mapsは告知があった通りデータがベクタデータ化され3D対応が行われた。この変更はストリートビューとの親和性を高め、カーナビなどの特殊用途においても、ある角度からどのように建物が見えるようになるかが分かるため、より実用的なカーナビ機能を提供できるようになると思われる。

アマゾン、Androidアプリのオンラインストア「Amazon Appstore」を開設

アマゾン版AppStoreとでも言うべきAmazon Appstoreは、今回のCESにおいて行われた発表の中でも最も興味深い内容でした。今までスマートフォンにおけるアプリの販売は大きく分ければ、Appleが採用する、審査があり、審査が通ればアプリ開発者が値段などを自由に決めることができる方式と、アンドロイドマーケットが採用する、審査が存在せず、自由にアプリをアプリ開発者が販売できるものになっていました。

今回、アマゾンが撃ち出してきたAmazon Appstoreは、その2つのどちらでもない新しい概念のアプリストアです。

詳しくは上記のTechCrunchのエントリーを読んでいただきたいのですが、ポイントだけピックアップすると以下のような特色があります。

  • Amazon Appstoreは審査が存在し、AppleのAppStoreのように承認制となる。ただし、Appleほど審査は厳しくしない。
  • Amazon Appstoreでの価格はアマゾンが決める。まず、アプリ開発者が値段をつけ、アマゾンが市場要因を勘案して最終的な売値を決める。売上の70%がアプリ開発者の取り分となる。アマゾンが有料アプリを無料で販売したような極端なケースでも、アマゾンが定価の20%の取り分は保証する。

これは非常におもしろいシステムです。まず、アンドロイドで本格的な審査ありのマーケットが立ち上がったことが大きなポイントと思います。アンドロイドマーケットは審査がないため、AppleのAppStoreと比較し、自由なアプリ、とんでもないアプリが多く存在します。しかし、審査がないということは、最近登場したアンドロイドウイルス・ボットなどの驚異を考えると、ウイルスチェック機能を備えないマーケットにおいて急速にウィルス被害が拡大する原因となる可能性があります。個人的にはこのアンドロイドウィルス・ボットの驚異は、今年の中旬くらいからかなり本格化すると思っています。アンドロイドが今年スマートフォンのNo.1プラットフォームになり、携帯電話に格納される情報はPC以上に重要な個人情報であることを考えるとウィルスを甘くみることはできないでしょう。

このような状況で、アンドロイドにおいてもある程度品質のコントロールされた審査ありのアプリストアの要望が高まってくると思われます。この時に、Amazonという通販部門で大きな信用を得ている企業が参入してくることは大きな意味があるでしょう。すでに多くの人がアカウントを持っているAmazonが参入することで、一気にアンドロイド内のストアの勢力図が変わる可能性があると思います。

また、後半のアマゾンがアプリの売値を決定するというのも非常におもしろいです。このことは以下の3つを意味すると思います。

  • アマゾンが今まで貯めてきた商品を最も売れるようにする価格決定手法がそのまま使えるようになること。
  • 半額・0円キャンペーンのようなマーケティング手法をアプリ開発者が行えなくなるため、長期的にみた場合、品質が良く、きちんとメンテナンスされているアプリが一番売れるようになること。
  • アフィリエイト、レコメンデーションのようなアマゾンが得意とする販売手法が、他の商品と同じようなアルゴリズムで利用可能となること。また、アンドロイドにもアフィリエイトが導入されることで、アンドロイドを紹介するサイトが増え、アンドロイドアプリ売上全体が底上げされること。

長期的に見て、売上が最も高くなることはアマゾンにとってもアプリ開発者にとっても喜ばしいことですから、Amazon Appstoreはアンドロイドにとって大きな転換点になる可能性があると考えています。今後もAmazon Appstoreから目が離せません。







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