前回のアンドロイドの論点 : 「どうしてiモードの夏野剛氏は日本でアンドロイドが大きく普及すると考えるのか」が好評だったことを受け、アンドロイドの論点というテーマでまた記事を投稿させていただきます、gamellaです。今回のトピックはたまにいただく「アンドロイドアプリは儲かるのか?」という質問について、いろいろな観点から考えてみたいと思います。
アプリケーションプラットフォームとしてのアンドロイド
コンテンツプラットフォームとしてのiPhone
「アンドロイドアプリは儲かるのか?」という質問をうけたときに、まずはっきりさせておく必要があるのはアンドロイドはアプリケーションプラットフォームであるが、iPhoneやPlayStation、Xboxのようなコンテンツプラットフォームではない、ということです。これはどういうことかと言うと「アンドロイドアプリは儲かるのか?」という質問をするとき、その人はiPhoneなどと比較して考えて、アンドロイドアプリは儲かるのか?ということを考えていると思います。iPhoneアプリは個人でヒットを飛ばしたときは儲かるが、会社で大きく儲けるにはなかなか難しいマーケットだと思います。ただiPhoneはAppStoreでアプリを購入する、その売上の3割をAppleに支払い、残り7割が儲けになる、という非常に分かりやすいコンテンツプラットフォームです。
他方、アンドロイドはAppStoreのようコンテンツの購入場所であるストアが1つに決まっておらず、さまざまなストアを独自に展開することもできます。もちろんGoogleが運営するAndroid Marketという標準のストアがありますが、アンドロイドは独自に作成したアプリをAndroid Marketを通さずにインストールさせることを認めています。つまり、iPhoneのようなAppleのルールに縛られない独自のコンテンツプラットフォームを自社で作成することが可能なのです。
例えば、ドコモストアでは無料アプリのインストールのみを行い、有料アプリはAndroid Marketからインストールさせるということを行っています。
しかし、前回のアンドロイドの論点で触れたようにアンドロイド版iモードであるspモードが9月にサポートされ、その後、現在はAndroid Marketからインストールされている有料アプリが、ドコモが用意するストアから通信料からの支払いでインストールできるようになるそうです。この部分がiPhoneのモデルとは根本的に違っており、企業にとってみればiPhoneはコンテンツプロバイダーがコンテンツをAppStoreで売って儲けるというスキームであるのに対し、アンドロイドは可能であれば自分でコンテンツプラットフォームを作成し、それを発展させていける可能性を持ったプラットフォームなのです。このあたりは個人でアプリケーションを作って販売する分にはほとんど変わりませんが、企業が勝負をかける場合は、そのプロモーション戦略や課金システムの根本的な部分まで変わってくるということで、今後より面白い発展がありえる部分だと考えています。
そもそもアプリ単体で儲けるということは根本的に難しい
また、「アンドロイドアプリは儲かるのか?」という質問に対して回答を考えるうえで、はっきりさせておかなければいけないことは、アプリケーション開発というものは基本的に儲からないものだ、ということです。と言うのも、ソフトウェアというものは何か目標となるソフトウェアが存在している場合、そのソフトウェアの水準まで真似をして到達するということは、新しく有用なソフトウェアを作るよりも著しく簡単なのです。よって、ソフトウェア開発で儲ける方法は基本的に二通りしかありません。他が真似する気もおきないダントツのブランドを築くか、コンテンツとして稼ぐか、です。
他が真似の出来ないソフトウェアをつくるというのはイバラの道です。前述の通り生半可なソフトウェアではすぐに真似されてしまい、体力のある企業ならばダンピングまがいの値段で市場に投下されます。Photoshopのような圧倒的なブランドをもつソフトや、ニッチな市場でデファクトスタンダードとなってしまったため新規参入が非常に難しいということはあるかもしれませんが、アプリケーション単体で儲けるということはかなり大変なのは皆様御存知かと思います。
最近の流れをみるとアプリケーションと考えず、そのソフトウェアをコンテンツとして考えてお金を稼ぐというのがスマートフォンでもだいぶ主流になっているのではないかと思います。コンテンツとして稼ぐというのは、アンドロイドのような端末ではソフトウェアを売るというより、コンテンツを作成して消費時間をユーザーから奪うと考えた方が正確でしょう。前回のアンドロイドの論点で述べたソーシャルゲームプラットホームというものはまさしくこの分野になります。継続的にユーザから消費時間を奪うことができれば、ゲーム内課金や広告を挿し込んだりすることでユーザの消費時間をお金にする道が見えてきます。現在ブラウザゲームはそのような状況ですが、今後スマートフォンでもこの分野の競争が激化してくると思われ、すでにモバゲーは海外で日本の人気コンテンツ「怪盗ロワイヤル」を「BanditNation」として展開しており、さらにこれらをアンドロイドにも広げスマートフォン版モバゲーを海外で展開しようとしています。以下のDeNA大塚氏へのインタビューは非常に参考になりますので、一読をおすすめします。
このテーマは次回に続きます
「アンドロイドアプリは儲かるのか?」というテーマは、いろいろ論点の多いトピックです。次回はAR、クラウドなど新たな分野のアプリについて論じてみたいと思います。