アンドロイドの論点 : 「スマートフォン市場を狙うゲームコンテンツ」

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久々の更新となる【アンドロイドの論点】、これで5回目となります、gamellaです。【アンドロイドの論点】を書き始めた当初は、まだ具体的に見えてこなかった日本におけるアンドロイドの普及も、今冬の各キャリアのアンドロイド端末を見るに非常に力を入れてきており、【アンドロイドの論点】で述べてきた日本におけるアンドロイドの普及のシナリオや問題点がだいぶクリアになってきたと思います。

特に各キャリアがSPモードを代表する携帯メールアドレスのサポートとコンテンツ課金、独自マーケットを一斉に開始しようとしており、他方GMOのようなこれまでコンテンツプラットフォームを抱えてこなかった会社までマーケットをオープンしようとしています。ただ、これがiモードの時と同じコンテンツの爆発を引き起こすかというと、それはなかなか難しい部分が多いと思います。インターネットにつながるスマートフォンと独自のネットワーク網の上で公式サービスとしてコンテンツが展開されたiモードとでは、コンテンツ普及の流れが大きく異なってくるのは間違いありません。その中でも代表的なコンテンツであるゲームコンテンツを今回のアンドロイドの論点では取り上げたいと思います。

現在のスマートフォン市場のゲームコンテンツの未来を表すDeNA南場社長の言葉

スマートフォン市場を狙うゲームコンテンツの現状を整理をする上で、良い題材となりそうなのが、以下のニュースで紹介されていたモバゲーを運営するDeNA南場社長の言葉です。

特に気になった箇所を引用してみます。

さらにDeNAは2014年にはスマートフォンが世界で20億台普及すると予想している。モルガン・スタンレーの調査によれば、スマートフォンの出荷台数は2012年にPCを逆転し、同時期にフィーチャーフォン(一般的な携帯電話)を逆転する可能性があるという。iPhoneをはじめとしたスマートフォンユーザーは携帯端末利用者の平均以上に、ゲームやSNSなどのモバイルコンテンツを利用する傾向にあるというデータもある。
DeNAはここに目をつけ、世界のスマートフォン向けゲームコミュニティに狙いを定める。重視するのはiPhoneとAndroidだ。現在のスマートフォンのゲーム市場について南場氏は、「大手がまだ実績を出しておらず、混沌としている」「ほとんどのゲームがソーシャルな要素を備えていない」「コミュニティを持つ競合が不在」と分析した。よって、DeNAが存在感を示す余地は十分にあるという。
「現在のiPhone向けアプリには、App Storeのランキングを上げるしか顧客獲得手段がない。だがコミュニティを持つと、招待機能のようなバイラル効果があったり、ゲームユーザーがコミュニティに定着したりする。コミュニティのあるなしでプロモーションコストは変わってくる。なかでもバーチャルコミュニティのパワーは大きい。実名のリアルなコミュニティはリアルな人間関係の枠の中の、さらにアクティブな人たちで遊ぶ。複数のゲームを移っていくなかでユーザーが縮小し、リアルの枠から広がらない。バーチャルなコミュニティだと、新しいゲームに前のゲームから友達を誘うこともできるし、そこで新しい友達を作ることもできる。プレイヤーが広がっていく。ニッチなゲームが好きで、リアルな友達には仲間がいなかったとしても、バーチャルなコミュニティなら対応できる。バーチャルだからこそ、ユーザーを拡大できる」(南場氏)

スマートフォンが2014年までに20億第普及するかどうかは結構難しいラインだと思いますが、スマートフォンの出荷台数が飛躍的にあと数年で伸びることは、今年の各キャリアのアンドロイド端末を見ても間違いないでしょう。恐らく、見た目は一般的な携帯端末(最近はフィーチャーフォンと呼ばれたりしています)に似ているけれども、中身はアンドロイドベースというようなものが登場し始めて、いつのまにか低機能端末以外の部分はごっそり置き換わっていた、ということが5年というスパンで見たら発生する可能性があります。

日本の人口が減り続け、フィーチャーフォンの出荷も先細る中で、スマートフォン市場をゲームコンテンツで奪取しにいくというのは、モバゲーに限らずGREEやサイバーエージェント、GMOなど日本のネット企業の社長が最近はみんな口を揃えて言い始めています。サイバーエージェントなどは新規事業に関わるエンジニアにアンドロイド端末を配布し、「アメーバピグfor Androidβ版」を展開するなど、本気度が伺えます。

どのようなゲームコンテンツがスマートフォン市場を奪取できるのか

既に激戦となりつつあるスマートフォン市場ですが、ではどのゲームコンテンツがスマートフォン市場を奪取するのに向いているのでしょうか?代表的な事例は以下の3つになると思います。

  • コンシューマゲームベースのゲームがスマートフォン市場を奪取する
  • ソーシャルゲームベースのゲームがスマートフォン市場を奪取する
  • 他のジャンルのゲームがスマートフォン市場を奪取する

この3つは排他的なものではなく、それぞれがある程度の配分でスマートフォン市場を奪取する可能性があるものの、個人的には上の記事で南場氏がおっしゃるように、ソーシャルゲームベースのゲームがスマートフォン市場を大きく奪取する可能性が高いと思います。

コンシューマゲームとソーシャルゲームのそれぞれのビジネスを単純に考えてみると、コンシューマゲームのベースは基本的にそのコンテンツを一定額で買い切り、ユーザはその買い切ったコンテンツを決まった時間で消費することがビジネスのベースとなります。ソーシャルゲームは逆に、無料のゲームをたくさん用意し、ユーザがそのゲームをさらに楽しむためにアイテム課金などでお金を払ってもらうことがビジネスのベースです。

コンシューマゲームはXBOX Liveのようなコンシューマプラットフォームの上に存在するプラットフォームゲームコミュニティの上でゲームを展開してきたため、ソーシャルゲームの抱える独自のコミュニティを持っていません。そのようなゲームコミュニティを持たないコンシューマゲームは、販売するゲームコンテンツのCMを大量に投下することで、マーケティング的に一気に認知させる必要がありますが、iPhoneもアンドロイドもこの部分がとても難しいことが分かってきています。例えば、既存のコンシューマゲームのようにディスクメディアが販売可能であれば、Amazonやヤマダ電機のような販路を利用し、あとはそこにどのように人を流入させるかのノウハウ的なものを各社ある程度もっています。しかし、iPhoneやアンドロイドでは、その購入に至る関心を喚起する部分のマーケティング的なノウハウがほとんどなく、単純にコンテンツが存在することを認知させるだけでも、iPhoneならAppleの協力が必要不可欠であったりするため、非常にやりにくい側面があります。

他方、ソーシャルゲームはその基本的な部分として、そのベースとなるモバゲーやGREEのようなゲームが一箇所に集められ、遊ぶゲームを選ぶことができるゲームの発信基地とでもいうべき部分が存在します。このゲームコミュニティをベースにすることで、CMでモバゲーやGREEというプラットフォーム名が無料ゲームという言葉と一緒に連呼されているように、同じ感覚で「iPhoneでもモバゲー」、「アンドロイドでもアメーバピグ」というようなことをアプールすれば、コンシューマゲームより簡単にゲームコンテンツを一般ユーザに認知させることができるでしょう。

つまり、コンシューマゲームの「コンテンツを売る」という特性よりも、ソーシャルゲームの「ゲームコミュニティを提供してその中でお金を払ってもらう」というスタイルの方が、よりスマートフォンのビジネスに親和性が高いと考えられるのです。

コンシューマゲームをスマートフォン市場に展開する上で不利と思われる点

しかし、ソーシャルゲームと比較してコンシューマゲームが圧倒的に不利というわけではありません。コンシューマゲーム側には世界で1000万本を売り上げるようなモンスタータイトルが存在し、そのモンスタータイトルのブランド力はスマートフォン市場でも非常に有効に作用すると思われます。単純に言うと日本でいう「ドラクエ」、世界的に見た「Call of Duty」のようなソフトです。

ただ、そのコンシューマゲームのモンスタータイトルにとって懸念となるのが、スマートフォン市場のインターフェースの問題です。というのも、現状のスマートフォン市場でコンテンツを展開しようとした場合、そのインターフェースはタッチインターフェースが前提にならざるをえません。前回のアンドロイドの論点でも取り上げましたが、まだコンシューマゲーム企業はタッチインターフェースベースで、今までのコントローラインターフェースのゲームと同じだけのおもしろさをもったゲームを作ることができていないのが現状です。

ゲームコンテンツ売り切り型のモデルにとって、この”おもしろさ”の絶対的な水準がモンスタータイトルのブランドを冠するだけの水準に達していないというのは大きな問題です。この問題はかなり根本的な部分なので、解決までかなり時間がかかると思います。

他のジャンルのゲームの可能性とまとめ

最後のケースである「他のジャンルのゲームがスマートフォン市場を奪取する」ですが、以下のようなジャンルが結構おもしろいのではないかと思っています。

  • ARが絡んだ位置情報ゲーム
  • 本格的なMMOやリアルタイムストラテジー
  • PCサイドのやり込み要素の高い戦国IXAやブラウザ三国志などのソーシャルゲーム

しかしならがら、セカイカメラが展開する位置情報ゲームを見てもわかりますが、現状ARゲームのおもしろさは一般的なソーシャルゲームのおもしろさに達していません。他のジャンルも他のジャンルなりの問題が存在します。

スマートフォン市場でヒットするゲームを作れることは、今後のゲームコンテンツにおいて重要度の高いことの1つなので、今後もたくさんのチャレンジがこのあたりで行われると思います。この動きは非常に早く、特に今は各社が必死で根回しをしているところなので目が離せません。スマートフォン市場を奪取するのはどのようなゲームコンテンツなのか、注意深く見守ろうと思います。







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